■都立中高一貫:桜修館 〜サッカーと受験勉強の狭間で〜
彼が Kip に入塾したのは 5 年生の春でした。塾には行った経験がなく、サッカーが好きな少年でした。
父親は将来、彼をサッカー選手にしたいという希望があり、すべての生活を最優先させてサッカー漬の毎日だったようです。
母親は、私立中学に受験させたいという思いが強く、サッカーは受験が終わるまではやめさせるという条件で入塾しました。
彼はサッカーをもちろん大好きなのですが、Kip での「らくらく読書」や国語・理科の授業にとても興味をもっていました。とても集中力があり、好奇心の強い子でした。潜在能力もあり、新しい知識をどんどん吸収していきました。
国学院久我山に行ってサッカーをしたいと漠然とは言っていましたが、学校のことは何もわからない状態でした。
6 年生の夏休み、120 時間にも及ぶ夏期講習&特訓を申し込んでいるにも関わらず、半分以上はサッカーの練習や合宿に参加することになってしまいました。
そのたびに彼は両親との間・サッカーの監督と塾との間で板挟みになってしまい辛い思いをしていました。
それでも彼は、勉強がしたいと言って頑張り続けました。
『先生。僕はサッカーも好きだけど、今は受験勉強をして受験をしてみたいんだ』
私たちとしましても、どうしていいのか分からず、何度もお母様と話合いをもちましたが、結局、受験日の 3 か月ほど前に、突然、家庭の事情で私立受験を断念しなければならない状況になってしまいました。
彼の落ち込みようは、可哀想なくらいでした。勿論私たち講師も同じように苦しみました。
私立受験を断念しても、Kip は続けたということで通塾していましたが、学習へのモチベーションが一気に下がってしまいました。
受験という目標がなくなってしまいましたので、家庭でも、全く学習意欲がなくなってしまった息子の姿に、お母様からも相談を受けました。
ある時彼が私に、『先生!今まで受験勉強をしてきたので、どうしても受験をしてみたい』と言うのです。
自分の実力を試してみたい彼の気持ちは痛いほど伝わりました。
「それなら、都立中高一貫校を受験してみようか?」
この提案にご両親も賛成してくれました。
ということで、短い期間でしたが、作文の勉強に力をいれました。
最後に受けた都立中高一貫校の模試では、合格点はとれていませんでしたので、授業中に彼の弱点を何度も注意しました。
私立受験するための学習で、算国理社の力はある程度ついていましたので、桜修館独特の記述対策を徹底してやりました。
桜修館の作文のポイントは子どもらしい目線で物を見ることができるかどうか、そしてそれを表現する力があるかどうかです。
持ち前の集中力の高さと吸収力の早さで、当日、彼は実力を発揮することができたのでしょう。
受験終了後、電話の向こうで、
「先生!ばっちりできたよ!!」
「それじゃあ 合格できちゃうね」
「うん。合格できる」
と自信ありげに笑いながら言っていました。
合格の報を受けた時、本当に嬉しかったです。ご両親も大喜びで、最後まで彼が諦めずにチャレンジできたことをとても喜んでくれました。
受験まで二転三転して苦しかったけれど、最後までチャレンジ精神を忘れずに頑張った結果です。彼は受験を通して、精神的にも大成長できました。
現在は大好きなサッカーを思う存分楽しんでいます。
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