都立中高一貫校 人気に陰り なぜ?
以前は非常に受検倍率の高かった都立中高一貫ですが、昨年度の受検ではほとんどの学校でその倍率が下がりました。その要因を探るために、都立中高一貫の受検者数推移をグーグルで調べてみました。するとAIによる概要が以下のように出てきます。
- 2019年(コロナ禍以前)の一般枠の受検倍率は4.5~6.7倍でしたが、2024年は2.5~4.5倍に低下し、4倍以下の学校が増加しました。
- 2024年の都立中高一貫校10校の一般枠募集では、募集人員1,574人に対して6,009人が受検し、平均倍率は前年度比0.4ポイント減の3.82倍となりました。
- 男子で一番の高倍率は両国高校附属中の4.39倍、女子は三鷹中等教育学校の5.05倍でした。
三つのポイントが出てきましたが、最初のものが最大のポイントで、コロナ禍を挟んでそれまで5倍前後であった都立中高一貫の受験率3倍程度になったということです。そこにはいくつかの要因が考えられるので、本日はそのことについて話をしていきたいと考えています。
大きく分けて二つポイントがあると思います。一つは経済的な側面、もう一つが教育観です。詳細を見ていきましょう。
- 経済的な側面
そもそも公立中高一貫の最大の魅力は学費が安いことです。これまで私立高校授業料無償化には年910万円未満の所得層に限られていましたが、この所得制限が24年よりなくなります。そうすると、学費が安いというのが魅力ではなくなり、無理に中学受検をする必要がなくなってしまったのです。私立の高校も無償化されるとなると、これまでライバルになかった私立校と天秤にかけられるようになり、結果として受検する人が減ってしまったということです。
蛇足となりますが、東京に住んでいるお子さんをお持ちの多くの方はもちろんこういう高校の授業料無償化を喜ばれているとは思いますが、個人的にはあまり良い政策だとは思えません。ほとんど義務教育に近いといえるような高校の授業料が住んでいる都道府県によって大きく異なるというのは、公平性の観点から首をかしげざるを得ないと思うからです。
- 教育観
コロナ禍が始まったときに、これまで誰も経験しなかったことというのもあり、各学校がいかに対応するかはマチマチでした。しかし、かえってそういう状況であったからこそ、保護者の目線では、頼りになる学校であるかどうかが見えたのではないでしょうか。公立の学校は中高一貫校を含めて、対応が遅かったように感じます。それに比べると私立は、オンライン授業への切り替えが早かったように感じます。もちろん各学校によって異なるので一概には言えませんが、同様の感想をもたれた方も多いのではないでしょうか。わが子を6年預けるという選択で、やはり頼りになる学校というのは大きな魅力になったのだと思います。
また、コロナの対応だけでなく、ここ数年新しい教育観というものがしだいに保護者の間に広がってきています。たとえば、
・ICTの導入
・アクティブラーニングを始めとした新しい授業
・海外研修を含めたグローバル教育の拡大
・海外大学への進学
といったこれまでなかった教育観を打ち出す私立の学校が増えてきました。それに比べると都立中高一貫は公立の学校ですから古い教育観がそのまま残っているように映ります。どちらが良いかというのは分かりませんが、社会が多様化しているわけですから、価値観も当然多様化していきます。偏差値の高さだけが学校の魅力ではなくなり、これからの社会を生き抜くのに、大切な6年間にわが子に何を教育してくれるのか、これまでの教育になかったものを提供してくれるのかというところまでをも保護者の方は求めているのです。その結果、公立中高一貫の魅力が下がったのではないでしょうか。
その他にも、学校のHPの違いもあるかもしれません。インターネットで検索するのが当たり前の今、更新を頻繁にすることは当然のことですが、中には更新があまりされていない学校も散見されます。それに加え、説明会などの頻度も私立のほうが多く、保護者の方にとって学校を知る機会がしぜんと増えるのだと考えられます。当然、認知する機会が増えれば、その分親近感も増します。
このようなことが原因となって、昨年度は都立中高一貫校の受検率が下がったのではないでしょうか。特にこの数年は、保護者の方が学校に求めるものが以前とは変わってきたように感じます。こうした変化に敏感になることが、人気の秘密を保つ秘訣ではないでしょうか。
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