大学全入時代とは何か?
カテゴリー:大学受験2023.03.26
随分と昔から「大学全入時代が来る」という話を聞いてきました。耳にした人も多いでしょう。「全入」とは大学への入学希望者総数が入学定員総数を下回る状況を指す言葉で、数字上では事実上「全入時代に突入した」と言っても良いでしょう。
全員が大学に行けるわけですから、みんなが行きたい大学に行けるような夢のような状況が来るのを想像する人もいるかもしれません。本当にそういう未来が来るのでしょうか?
ところで、「全入時代」という言葉は、「定員割れ」はという言葉とセットで使われることが多いのですが、「定員割れ」とは何でしょうか。大学の募集人員に対して、合格者数が届かないことを「定員割れ」と言います。
1999年から2桁率になるようになった定員割れ私立大学の割合が、2022年には47.5%にまで上がりました。要するに、現在では私大の二校に一校が定員割れをしている状況だということです。学部別で見ると、歯学部、薬学部 家政学系や教育学系において定員充足率が少ないようです。ただしこれは直近の数字ですので長い目で見るとトレンドは変わってくるかもしれません。
こうした定員割れが生じる原因として、まず挙げられるのは少子化です。90年には200万人いた18歳人口が2022年では110万とほぼ半数に減っていますから、定員割れも起こりやすくなると言えるでしょう。ちなみに去年の出生数が80万を切っていますので、18年後の18歳人口は80万人弱となり、今よりも30万人もその数を減らすことになります。
次に、1990年の時点で500ほどであった大学が現在は800ほどまでに増えたことも挙げられます。要は大学が増えたことで進学者数も増えたのです。子どもの数は減ったのに大学の数が増えたということは、当然大学進学率は高まっています。現在の大学進学率は、男女ともに6割弱となっています。上位二つの都道府県である京都、東京は7割以上の人が大学に進学しています。大学進学率が高まった一方で、高卒生や専門学校進学者は減りました。たとえば、昔であれば看護専門学校へ行っていた人たちは、現在では大学の看護学部へ行くようになっています。受験率が上がった結果として、18歳人口の減少ほど大学志願者は減っていません。
しかし、ここで奇妙なことに気づくはずです。全入時代が到来したにもかかわらず、全国的には6割の人しか大学に進学していないという事実です。
そもそも本当に「全入」であれば進学率が100%になるはずですから、なっていないということは大学に行けるとしても進学しない人がいるということです。
その大きな要因の一つは地域的な問題です。
これまで話してきた「定員割れ」というのは平均で起こっている現象です。つまり、全国平均で見ると確かにそういう状況ではあると言えますが、もう少し細かい範囲で見ると、必ずしも「定員割れ」が起こっていると言えないからです。実際、こうした定員割れ現象が起こっている一方で、都市部の人気大学の人気がますます高まっている現象も同時に起こっています。2023年の受験者数のトップは近畿大学で15万人です。こうしたマンモス大学のほとんどは首都圏と関西圏にしかありません。
「23区規制」や「定員数厳格化」などを考慮すると実際には人気大学はもっと人気があるということになります。
要は、人気大学はますます人気になり、人気のない大学にはいつまで経っても人が来ないために、定員割れのような現象が生じるのです。個人的には、日本に現在のような数の大学は必要ないと思いますが、大学として認可されると文科省から補助金が出ますから、維持したい人たちがいるのでしょう。その意味で言いますと、人気大学は依然として入学することが難しいと言えるでしょう。ただし、こうした数の問題とは別に入試方法も多様化しているので、早い段階から情報を収集して、自分に合った受験を選べば昔よりも入りやすくなったと言えるかもしれません。
明治大学文学部 合格体験記
カテゴリー:大学受験2023.03.23
『私のド根性受験奮闘記』
私には根性がある。これは強みだ。私が歩んできた短い人生の中のつらく苦しい受験勉強の中で、このド根性が身についた。高校二年生の冬に志望校を決め、意気込んだ受験勉強。本当につらい戦いにはなったが、得られたものがとても多く、今ではこの経験は何物にも代えがたい素晴らしいものになったと思う。
まず、大学受験と本気で向き合おうと決めたきっかけは、ほとんど挑戦心だった、と今では思い返せる。高校二年生までの成績は本当にひどいものだった。現代文はまず文章を読むのが遅い、語彙の知識も少ない、古典は文法が覚えられていない。数学は何が何だかさっぱり。英語は、辛うじて文法は理解しているのだが長文はまったくダメだった。世界史に関しては、興味はあるものの、やる気がなく学習しようとしない。本当に勉強がいやでいやで仕方がなかった。しかしそんな勉強が苦手だった私の考えを覆すこととなった出来事は、大学選びだった。二年生の冬、私には行きたい大学が見つかった。最初は自分の学力の範囲で行けるところを、と選んでいたのに、私が見つけたその大学は、当時の学力ではほぼ無謀だった。そして私はそこで初めて、挑戦しようと思い立った。まだ時間はある、やれるところまで努力すれば“いい線”までは行けるはずだ、と。そこから私の“戦い”は始まった。
受験期間の高校三年の春、入塾をし、夏休みまでは、ずっと基礎を叩き込み続けた。本当にずーっと。まず、学校への通学時間は英単語と古文単語を暗記。HRが始まる一時間前に到着し、また英単語と長文。休み時間は移動教室がなければ世界史の資料集を広げ、放課後は図書時間で古典文法を覚え、塾で授業、そのあとは自習。苦しかった。自分がやっている問題たちは本当に簡単なものばかりで、情けなかった。ほかの人はきっと、もっと難しい勉強をしているはずなのに…。こう、卑屈になることもあったが、あきらめなかったのは、自分の精神力のおかげだった。周りがどうであろうと、やっぱり自分の成績が上がればうれしいし、自分を高められるのは自分しかいないぞ、と常に心にとどめていた。それだけではない。いつも励ましてくれる、先生。テストの点数を見せるたびに、お褒めの言葉をくださって、この調子で成績が上がり続ければどこまででも行けるんじゃないかと言ってくださった。どれだけ励みになったことか。その言葉通り、本当に成績は伸びた。面白いほど伸びた。
夏休みになると実践的な問題も取り組むことができるようになった。それでも英単語長や、古文単語長は毎日見直した。一回も遊びにはいかなかった。自分にはそんな時間なんてない、と腹をくくっていた。本当は遊びたかったけれど、それよりも、受験結果をいいものにしたかった。
秋、冬は孤独を感じたりもした。過去問を解いては絶句し、見直し、また絶句しては見直し。最初は一人で勉強することが苦痛だった。しかし、そんなことはないのだ。頑張っているクラスメートも応援してくれる先生も、家族もいた。だから、別に受験をあきらめる理由なんてものは、別になかった。塾には寝て起きてそのまま直行していた。ぼさぼさ頭にジャージ姿。目標以外、あの頃の私には何も見えていなかった。もちろん成績には停滞期もあったが、そこで折れたら私の得てきた根性は役立たずだ。とにかく粘った。受験が終わったら何でもできるのだから、せめてそこまでは。必死に自分と戦った。
受験は結局のところ、第一志望には届かなかったけれど、一年前の自分では不可能だっただろう大学に合格できた。もちろん悔しかったが、本当に頑張った結果がこれなら、とてもよかったと思えた。周りのみんなも、喜んだり驚いたりしていて、改めて自分は頑張ってこれたなあとうれしいと同時に誇らしかった。
今回の大学受験で、私は学力を手に入れたが、精神力も手に入れられた。大学受験のような、過酷で険しい山にはどんなにしんどくとも、トライしたことに意味がある。困難にぶつかることはこれから何度もあるだろうが、このような受験期の経験が私の人生の中で生きてくることは間違いないだろう。
恵泉女学園
カテゴリー:学校紹介2023.03.18
恵泉女学園は、小田急線の経堂駅から徒歩10分ほどにある、プロテスタントの女子校です。河井道さんが戦前に創設し、「広く世界に向かって心の開かれた女性を育てなければ戦争はなくならない」という理念を持っています。
最近の特徴としては、偏差値が伸びていることです。2013年の53から2023年には65まで上昇し、(すべて首都圏模試の2月1日合格率80パーセントを参照)鴎友学園(偏差値70)に迫る勢いとなっています。高校では募集をしていないため、入学したい人は中学受験をする必要があります。進学実績は近年良くなっており、特にMARCHへの進学者数が増えています。2013年と23年の合格者数を見てみると下記のようになります。
明治 5⇒27
青学 17⇒14
立教 9⇒17
中央 6⇒8
法政4⇒22
ただし、早慶国立はあまり変わっていないところを見ると、学習カリキュラムがMARCHレベルなのだと言えるでしょう。実際、進度もそこまで速いわけではなく、内容ももちろん公立中学よりは難しいのですが、バリバリの進学校ほどではありません。
教育方針は、主体性・多様性・協働性を育むことで、聖書(主体性)を用いて自己肯定感や自分自身と向き合う力を育み、国際(多様性)を学び、英語力と世界観を広げ、園芸(協働性)を通じて「いのち」の尊さや感謝の気持ちを養います。
園芸に力を入れており、園芸の授業があるのは、特徴と言えるでしょう。英語に力を入れていますが、帰国子女に対してはそこまで積極的であるとは言えず、10名弱の合格に留まっています。
恵泉女学園は少人数制で、学習習慣を確立することに力を入れ、昨今注目されているような学習にも積極的に取り組んでいます。授業料は、初年度の納入金額は112万円で、10年前に比べて20万円ほど上がっています。
授業スタイルは少人数制で、学習習慣を確立することに力を入れており、昔からディベートや小論など昨今注目されているような学習にも力を入れてきました。
また、成績が明確にでないため、自分の学力的な位置が分かりづらく、高3時の指定校推薦をとるかどうかのときに、情報がオープンではないことによって、受験生が大変な思いをする可能性があります。さらに、成績が良いと指定校推薦ではなく、一般で国立・早慶を目指すよう促されます。
個別指導塾の弱点
カテゴリー:ブログ2023.03.09
クラスという単位で学校や塾でクラス編成をしていた昔と異なり、現在、塾業界では個別指導塾が一般化しました。
しかし、個別指導といっても明確な定義がないため、「個別」と聞いたときに連想することは人によって異なります。Kip学伸も個別進学塾と謳っていますが、お問合せの段階で、「一対一の指導でしょうか?」という質問をいただくことがよくあります。実際には、個別指導と謳っているところも一対一の指導形式は少なく、多くは二人~四人程度が多いようです。
「個別」=「一対一」と連想する人は
一対一の指導形式である⇒自分のペースで勉強ができる⇒質問もしやすい⇒成績が上がる
という思考のプロセスを経て、「一対一」が良いと思われているのだと思います。同じ一対一指導でも家庭教師の場合は、自宅に来てもらわなければならないので大変ですから、それに比べると負担も小さいと言えるでしょう。
もし上記のようなことが本当であるなら、つまり一対一で教えてもらうことによって、学力が上がるのであれば、こんなに素晴らしいことはありません。なぜなら、学力を上げたければ、個別指導の塾に通えば良いという解答を得られるからです。
しかし、現実はやはりそううまくはいきません。中学受験や大学受験といった激しい競争を勝ち抜かなくてはならない受験の世界で、一対一で指導してもらって合格を勝ち取ったと言う人は、かなり稀だと思います。実際、中学受験の世界ではいまだに集団指導塾のほうが主流です。例外的に一対一の指導が効果を発揮するのは、指導してもらうべき単元や問題が明確なときでしょう。入試前に苦手な理科の単元を見てもらう、過去問の算数だけを見てもらう、といった状況では一対一である最大のメリットを発揮すると思います。ただ、これは例外的な状況で、長期的には一対一の指導で受験を勝ち抜くことは難しいと言えるでしょう。
それはなぜでしょうか?
一般的に個別指導塾のデメリットとしては「競争がない」ことと「授業料が高い」ことの二つが挙げられます。一対一指導であればなおさらそのデメリットは強調されるでしょう。
教育の世界でも、当然資本主義の原理が働くわけですから、競争があるほうが人は頑張りやすいと言えます。また、一対一で指導するのであれば、当然費用が高くつきますから、受講できるコマ数も限界があり、多くの科目をたくさん見てもらうことは難しくなるでしょう。
しかし、個別指導の最大のデメリットは、そうしたことよりも講師が学生バイトであることだと私は思っています。もちろん中には受験の特殊算を指導できる人も数多くいるでしょう。指導がうまい学生もたくさんいます。しかし、学生の本分は勉強ですから、アルバイト先で指導している生徒の勉強を自分の勉強より優先するというケースは稀でしょう。また、それを求めるべきではありません。
「競争」があることによって頑張れるのが集団塾の特徴であるのであれば、個別指導塾の特徴は「マイペースで頑張る」ということにはなりません。「競争」に効果があるのは、「競争」がモチベーションとつながるからです。「マイペースで頑張る」というのは、あくまでも自分のペースで学習したいという思いであって、モチベーションとつながるわけではありません。要するに、一対一で指導するのであれば、モチベーションも各生徒に合わせて上げられるような引き出しが講師に求められます。もちろん、それを学生に求めるのは難しいでしょう。
そもそも「振替授業が簡単に行える」「自分のペースで勉強ができる」「一対一で教えてもらえる」「先生は優しい大学生」といった環境で緊張感を保って学習に臨むことは相当に難しいことです。特に一対一の環境は、どうしても馴れ合いになってしまいます。経験の少ない大学生であればなおさらでしょう。
とはいえ、昔と違って、中学受験と言っても選択肢も増え、難関校だけではありませんし、その入試方法も多様化しています。そういうことを考えると、そうした希望に沿って学習カリキュラムを組んでくれる塾があるのであれば魅力的なことは間違いないでしょう。
ですから、これから塾を探す場合に、上記のような個別指導のデメリットに対してどういうアプローチをしているのかを聞くことで、個別の魅力だけをもった塾に出会えるかもしれません。
なぜ付属校の人気が下がりだしたのか
カテゴリー:中学受験2023.03.03
2023年度は全般的に付属校の人気が下がったようです。特に慶応、早稲田、明治といったトップ校に減少が顕著に見られます。
そもそもこの数年、付属校人気が高まった背景に、都市部にある大学の入学定員の厳格化と、「23区規制」と言われる平成30年から10年間、東京23区に店員を増やしたり、新しい学部・学科を増やしたりできないという規制がかけられていることが挙げられます。
簡単に言うと、この二つの規制が事実上軽減されたことにより、付属校の人気が下がりました。
まずは、募集人員のほうから考えてみます。募集人員の厳格化とともに一般入試による難関大学がさらに難しくなり、その影響で付属校志向が高まりました。また、付属校や系列校の中高が近年増加傾向にあるため、数年先にはますます大学受験が難化するだろうという推測のもと、中学受験で付属校狙いとなったのでしょう。また、23区規制があるため、需要の高い「情報系」のような学部の定員を増やせないため、大学受験で入ることがいちじるしく難しくなったことも要因の一つです。
このような大学受験を見据えた結果、早い段階で付属校に入って大学の心配をなくすという人が増え、そのことで付属校の人気が高まりました。
入試事情以外にも、大学受験をしないことで、単なる詰め込み教育ではない教育が受けられる(体験学習型の授業など)ということも支持を得ている一つの要因と言えます。そもそも学力のみで人の能力を測るということ自体が時代の流れに沿っていないため、勉強を詰め込む以外のことを学校に求めるのも当然と言えば当然の流れです。
こうしたことを背景に付属校は人気が上がっていましたが、2023年度では付属校の人気に陰りが見えはじめました。
その原因の一つは、「入学定員厳格化の緩和」です。募集人員の厳格化が進むと思わぬ弊害もありました。その最大の弊害は繰り上げ合格の増加です。受験生にとっては、他の大学に入学金を収めた後に、合格通知が来るのです。繰り上げの繰り上げや補欠合格の補欠合格などもあり、遅い場合は4月に合格通知が来ることもあり問題になりました。また、学校にとっても募集人員の生徒が入学しても、仮面浪人や中退などが出ますと授業料収入が減り、経営を圧迫することになります。そこで、入学時の募集人員の厳格化ではなく、4年間の総定員で学生数を見るようになり、結果として合格者数が増えることになりました。これが「入学定員厳格化の緩和」です。
また、「情報系」を始めとしたデジタル系の学部のニーズが受験生からも産業界からも高まるなかで、23区規制を改正しようという動きが出始めました。そして、こうした学部に限っては、規制を外すことを文科省が認めました。要は「周回遅れ」と言われている日本のデジタル教育のてこ入れです。そうした流れの中、特に女子高が理系に力を入れるようになり、結果として、私立の大学よりも国立理系志向が高まっています。そうした学部への対策を考えている中学の人気が出だしたのでしょう。
以上のような流れから、一時急騰していた付属校の人気が下火になったのだと考えられます。